2001年 第3回東アジア競技大会 サッカー競技
College Soccer Central


予選リーグ 日本−オーストラリア 試合レポート、監督・選手コメント



試合レポート
 
公式記録
戦評


オーストラリア戦・羽生  予選ラウンド第2戦、日本はオープン参加のオーストラリア代表と対戦。オーストラリア代表は、2年前にU-17世界選手権で準優勝したメンバー5名を含むU-20代表選手中心の構成でこの大会に参戦。「6月のアルゼンチンでの大会が本番なので、戦術などはあまり変えないようにした」(オーストラリア・アンゲロス・ポステコス監督)というように、ワールドユース大会前の強化試合的な位置づけでこの大会に臨んでいる。この大会をユニバーシアード本大会前の強化試合とする日本とある意味似た立場にあったが、結果は「相手にアウェーでの戦い方をさせてしまった」(日本・瀧井敏郎監督)との言葉通り、オーストラリアが「世界レベルでの経験の差」をきっちりと活かして勝利を手中に収めた。
 一昨日の試合の勢いの残る日本は、試合開始から積極的な攻撃を展開。しかしグアムと違い、ボールの競り際で強さを発揮するオーストラリアは要所要所で日本のパスをカット。グアム戦で機能していたサイドからの攻撃も、思うように展開できない。15分を過ぎた頃になるとオーストラリアも徐々にボールをキープ。なかでもDF(4)ミリセビッチが攻撃の起点となることが多く、日本はミリセビッチのロングボールを警戒。しかしミリセビッチに対するチェックが中途半端で、逆に中盤が間延びしてしまい、そこをオーストラリアにつかれることも。32分には、(9)オーエンズがサイドからドリブル突破し、ゴール前フリーの(7)パンテリスにクロスを挙げるが、タイミングが合わずシュートは枠の外。しかし前半のロスタイム、警戒していたミリセビッチからのパスを(13)エッズ、(6)スリョージが速い展開で前線に運び、パンテリスの上げたボールを最後は(16)ケネディが決めて先制。ロスタイムの失点、しかも「オーストラリアは4番の選手さえ抑えればそんなに怖いチームじゃないと思っていた」(瀧井監督)と警戒していた展開だっただけに、日本にとっては悔やまれる形で前半を折り返すこととなった。
オーストラリア戦ゴール前  後半、1点を追う形となった日本は(16)関根に代えて長身FWの(9)太田を投入。8分には、この太田が(5)三上からのFKにヘディングで合わせるも惜しくもゴールならず。また、前半は機能していなかった中盤の“ちびっこトリオ”、(7)羽生、(10)山根、(11)深井がいい形で攻撃のトライアングルを作り、波状攻撃で果敢にオーストラリアゴールを狙う。さらに13分太田からパスを受けた(11)深井が目の覚めるようなドリブルで中央突破。14分には、前試合でも攻撃の起点となった右サイド、(2)平川、(8)藤田のコンビネーションから上がったクロスに再び太田が合わせる。しかしオーストラリアGKの好守もあり、日本はどうしてもゴールまで結びつけることができない。
 15分すぎからには、オーストラリアが徐々にボールをキープ。決して速い展開ではないものの、無理をせずに確実なパス回しで日本の攻撃をペースダウンさせる。オーストラリアの術中にはまり、突破口の見出せなくなった日本は18分、中盤の藤田と(12)石川を交代。「(長身の)太田を入れていたので、石川の精度の高いクロスとセットプレーを期待して」(瀧井監督)の投入だったが、決定的に試合の流れを変えるまでにはいたらない。その後も、疲れの見える(6)堀之内に代えて攻撃力のあるボランチ(14)吉村を投入するなど、なんとか1点を挙げようと試みるも、試合巧者・オーストラリアの前に思うような展開ができないまま時間だけが経過。結局、オーストラリアが前半に挙げた1点を守りきって試合は終了。日本の波状攻撃に対しても焦ることなく、柔軟に対応するオーストラリアのしたたかさが光る試合となった。一方の日本は「マイボールからフィニッシュまでの展開が課題だったのに、その課題を修正することができなかった」(瀧井監督)、「攻撃になったときのボールの動かし方がよくない」(FW・深井)というように、攻撃に関する課題をそのまま持ち越すような内容になってしまったことは否めない。

(写真左上=深井、山根らとともに、度々チャンスシーンを演出した羽生)
(写真右下=深井、太田のシュートもオーストラリアGKの好守に阻まれる)

コメント


■オーストラリア代表 アンゲロス・ポステコス 監督

ポステコス監督  日本については若干知っていることもあったので少しは研究していたが、大切なのは(選手が)試合に集中すること。我々は6月のアルゼンチン(ワールドユース選手権)が本番だと思っているので、戦術などは大きく変えずに挑んだ。ただ、日本は速いプレーをしてくるチームだということがわかっていたので、そのスピードを止めるようにと選手には伝えていた。  試合に勝ったことはうれしいが、プレーそのものには満足していない。特に前半、立ち上がりのプレーにはまったく納得していない。ただ、後半に関してはいいプレーができていたと思う。


■日本代表 瀧井敏郎 監督

瀧井敏郎監督  今日の対戦相手のオーストラリアは、U-17世界選手権準優勝チームのメンバーもいて非常にいいチームだとはわかっていたが、試合の出だしから、無理をせずに引き分けか、カウンターで点を狙うというアウェーでの戦い方が徹底されていて、我々はそれにまんまとのせられてしまった。日本はボールを奪ってからの展開が課題だったが、それができなかったし、狙っていたことが機能しなかった。
 交代に関しての意図は、まずFWの関根がケガあがりで、なんとか(試合に)使いながら復帰させたいと思っていたのだが、ちょっとしんどいようだったので太田に代えた。また、太田自身もケガをしていて半分くらいならなんとか、という状況だった。石川と藤田の交代に関しては、試合に負けていたし、石川のセットプレーと精度の高いクロスを期待して交代した。ボランチの堀之内については、デンソーカップでケガをした関係で体力的な問題があり、疲労が見えてきたのとオーストラリアのプレーに対応しきれていないと感じたので吉村に交代した。大柄なオーストラリアのな選手へは、ロングパスとクロスを上げさせないよう、素早いアプローチで対応するよう指示した。日本は小さな選手が多いが、小さくても身体を相手に預けてアプローチすることで対応できると思う。ただ、失点シーンなどはそうしたアプローチ不足から生まれたし、まだ100パーセントできているというわけではない。
 後半、攻めていた時間はあったのだが、(攻撃陣に)どういうフィニッシュを迎えるのかということが徹底されていなかったし。また、我々がしようとしているサッカーのポイントが少しずつズレていたのだと思う。深井のドリブル突破などもあったが、チーム全体が深井のスピードを活かすイメージが考えなければならないと思う。こうした大会は、ずっとピークでいられるわけではないので、切り替えて次の試合に挑みたい。


■日本代表 平川忠亮 選手

オーストラリア戦平川  苦戦するだろうということは最初からわかっていたし、後半は日本のほうが押していたので、内容的には悪くなかったと思う。この大会はメダルが最終目標なので、次に向けてのいいステップになった。オーストラリアは4番の選手がロングボールを蹴ってくるので、それだけが怖かったが、後半はそのあたりもきっちりできた。攻撃には関しては、右は自分と藤田、左は羽生と三上といった形でサイドを攻撃の起点にして行こうと思っているので、(意図的に)あがるようにしている。基本的に強い相手とやるのが好きなので、準決勝の相手は(韓国とカザフスタンの)どちらでもいい。


■日本代表 深井正樹 選手

オーストラリア戦深井  今日は、とにかくゴールチャンスに決めきれなかったのが敗因。自分自身、チャンスをモノにできず不甲斐なく思う。日本は、オーストラリアに比べるとチームの完成度が低かった。守備のほうに共通理解はあるが、攻撃になったときのボールの動かし方がよくない。高い位置でボールを奪えないと攻撃ができないし、攻撃自体行き当たりばったりだった。たくさんチャンスがあったのに、そこを活かしきれなかったということが、僕自身にとってもチームにとっても一番の課題だと思う。

Text/Photo:Reiko Iijima

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