2003年 第22回ユニバーシアード・大邱(韓国)大会
College Soccer Central


準決勝 日本−モロッコ戦 試合内容、監督・選手コメント、写真



試合レポート
 
試合記録


イタリア戦システム  大会直前の合宿から雨にたたられ通しだったチームらしく、最終戦はやはり雨中決戦となった 「今日の勝負どころはバイタルエリアの支配だと思っていたが」(西田監督)という日本は、狙いどおり立ち上がりから両サイドと2トップが積極的に攻め込む展開で、たびたびイタリアゴールを脅かす。しかし17分、右サイドからボールを受けた(9)CERCHIA Carmineが放ったミドルが岩政の頭上を越えてそのままゴール。「びっくりシュートみたいなのが決まってしまった」(アシスト・MF中後)という通り、意表をつかれた形でイタリアに先制点を奪われてしまう。だが、失点のショックにも冷静に対処した日本は、その6分後に「(この大会で)初めてといっていいくらいに合った」という中後のCKに、ニアにいたキャプテンの岩政がバックヘッドで合わせて同点に追いつき、そのまま前半を終了。
 前半と同様、後半も先に仕掛けたのは日本だった。49分、右サイドのMF前田が、イタリアDFをふりきって逆サイドに走り込んできたMF堀にドンピシャのボールを送る。パスを受けた堀は、ルックアップするとすぐさまにシュートを放ち逆転ゴールをゲット。「ニアが空いていると思ったので狙った。シュート以外考えていなかった」(堀)。
 しかし「リードしてから気持ちが守りに入ってしまった」(西田監督)日本は、1対1の局面からボールを奪われるなど、全体的にイタリアに押し込まれるシーンが目立ち始める。さらには63分、前半から注意していたというスピードのある(17)CHISENA Antonioに振り切られる形で2点目を決められ、試合は再びふりだしに戻ってしまう。同点に追いついたことで勢いにのるイタリアは、その後も波状攻撃を仕掛けるが、DFの踏ん張りと何より塩田の好セーブでイタリアの攻撃をシャットアウト。78分には混戦の中からゴールを決められるも、これはオフサイドの判断でノーゴールとなった。
 同点に追いつかれてからは、全体のラインが下がってしまっていた日本だが、「最後のほうは、ボランチの自分と(保坂)一成が疲れてきてやられていると感じていたんで、改めてやり直そうとした」(中後)という中盤からの建て直しもあり、徐々に守備から攻撃へとシフトチェンジ。また、75分に疲れの見えるFW山崎に代えて原を投入した成果からか、再びイタリアのスペースをつく展開が生まれ始める。89分には、DF村山から出たボールに反応した前田がクロス、相手DFが弾いたところを保坂がシュート。決定的なシーンだったが、わずかに相手DFに阻まれCKへ。時間は、すでにロスタイムに差し掛かろうとしていた。堀が蹴った右CKがゴール前の混戦の中でペナルティエリアの外に弾かれる。それをゴール前に走り込んでいた中後が豪快なシュート! 「たぶん相手には自分がブラインドになっていたと思う。ただ思い切り蹴っただけ」(中後)というゴールで再び逆転に成功する。
 イタリアを突き放す3点目を奪取した日本は、そのままロスタイムを守りきってタイムアップ。この瞬間、日本の2大会連続3度目の優勝が決定し、後半からやみ上がった夜空に日本ユニバーシアード代表チームの歓喜の声が鳴り響いた。

コメント


■西田裕之 監督

 正直、最初は予選突破も危ないのではないかと思っていたし、ここまでやってくれるとは思わなかった。オランダキャンプで、守備から攻撃のチームに転じられたことが大きかったと思う。みんな、最後に絵に描いたようにいいところが出た。このチームはこれで終わりだが、みんな、まだまだこれから伸びていく選手だと思う。
 出場停止の河端の代わりに(CBの)戸川を右SBに置いたのは、戸川よりも江添のほうがスピードがあるので、江添をCBにおいて相手の2トップのスピードを殺そうと思ったから。イタリアはこぼれ球からカウンター主体で仕掛けるチーム。サイドからつなぐチームじゃなかったので、我々の組織で十分に対応えきると思っていた。
 ハーフタイムには、今日の勝負どころであるバイタルエリアの支配が前半うまくできていたので、それを後半も続けようといった。前半きっちり守って、後半攻めるつもりでいたので、2点目は狙い通りだった。リードしてからは気持ちが守りに入ってしまったが、同点にされても落ち着いて対処できたのがよかったと思う。守備に関しては、自分たちのミスで失点することはあっても、相手にやぶられる形というのはまずないので信頼していた。
 正直ここまできたのが信じられないし、まさか優勝するとは思わなかった。ただ、こういうチャンスはめったにないことだし、ここまで来たからには絶対に勝ちたい、勝とうといってきた。しかし、この勝利は彼らのサッカー人生の中でのひとつの通過点、過程に過ぎないので、この経験を今後に活かして欲しいと思う。


■岩政大樹 主将

 ずっと苦しい試合を勝ち抜いてきたし、大会前のチームの評判もあまりよくない中で優勝できたので、ものすごい充実感がある。正直、2−1のスコアで終わらせなければならない試合だったと思うが、決勝だし、勝てて満足。それ以上いうことはない。
 得点につながったCKに関しては、中後はいつもあのコースに蹴りたがるんだけど、自分としてはもう少し真中やファー気味のほうがいいので、いつもはファーのほうに蹴ってもらっていた。でも、その前に堀健人がCKを蹴ったときに、向こうのGKのニアのところに問題があると感じたので、(中後が)CKを蹴る前にまわりのみんなに話をして、前のほうにいったら、うまくスペースが空いていたので、あわせることができた
 怪我人や出場停止者が出た件については、ユニバは短期決戦だからそういうことはあるだろうと予想していたし、誰が入っても同じだと思っていた。今日の試合も、みんなが辛抱強く守れたので勝てた面は大きいと思う。
 僕自身、このチームですごくサッカーを楽しめたので今まで出一番印象深い大会になった。個人的には、世界とやっていくために身につけなければならないスピードや感覚などの反省点もあったので、今後はそれを踏まえて大学での試合に活かしたい。


■堀 健人 選手

 ゴールした瞬間は、単純にうれしかった。(相手ゴールの)ニアが相手たから思い切り蹴ったけど、その瞬間はなんかヘタに冷静でした(笑)。今日は相手どうこうというより、自分たちのサッカーをやろうと思っていました。


■中後雅喜 選手

 決勝点のシーンは、たまたま入ってしまったという感じです。本当に入るとは思っていなかったから、「え? 本当に?」という感じ(笑)。本当は、その前のシュートのほうを決めたかったですね。
 正直、優勝できるとは思わなかったし、自分が出られないという不安もあったので、最後の2試合だけでも出られてよかった。今日は、モロッコ戦を経験していたので身体もよく動いたし、守備も機能していたと思う。今日の相手は2トップが鍵を握っているのとは身体的に強い相手だったので、楔にくる前のボールを保坂と2人で挟み込むのと、相手の(17)番がDFの裏を取る選手なのでそのケアをしようと話し合ってきた。最後のほうにはちょっと2人とも疲れてしまったが、もう一度やるべきことを確認してやり直したら持ち直すことができた。守備面でいえば、準決勝のモロッコ戦よりは楽だったと思う。  個人的には、自分の持ち味のロングボールが準決勝でも決勝でも活かすことができたのが大きな収穫だと思っている。また、守備面でも成長できたと思う。逆に今後の課題は、フィジカル面。90分を走りきる体力がまだない。それと、今回のように世界を相手にすると、ちょっとでもボールコントロールが不正確だとやられるということを痛感したので、もっとボールコントロールの正確性をつけないければいけないと思う。
 大会前に怪我をしてチームには本当に迷惑をかけてしまったが、自分が出られなくてもチームのパフォーマンスは下がらなかったと思う。優勝はうれしいが、このチームがここで終わってしまうのは本当に寂しい。


■塩田仁史 選手

 このチームはみんなで粘り強く守るチームなので、自分ひとりが守っているのではなく、みんなで守っているんだと思う。今日は味方も点を取ってくれているんで、自分も1本でも多く相手のシュートを止めようと思ってがんばった。


■戸川健太 選手

 自分としては厳しい大会だった。1試合プレーしてスタメンから外されてしまったが、自分なりに筋トレやプールなどでコンディションを整えてきたので、この試合でチームに貢献できたのがうれしい。自分はこのチームができた当初からいるので、どんなときでもチームを盛り上げるのが自分の役目だと思っているし、大会中もそれを心がけてきた。最後の最後にそれを活かせてよかったと思う。


■江添建次郎 選手

 決勝は自分のミスもあって苦しい展開だった。正直、勝負はどちらに転んでもおかしくなかったと思う。でも、みんながんばったその結果が、勝利に結びついたのだと思う。相手の2トップはやはりうまくて動きも速かったので、試合中はとにかく1発で抜かれたり、やられたりすることのないよう心がけていた。


■村山祐介 選手

 試合が終わった瞬間は、ガッツポーズをしてそのまま倒れ込んでしまった。この大会は苦しい試合の連続だったし、準々決勝の中国戦では自分のミスから失点してしまったという思いもあったので、優勝の瞬間には涙が出てきちゃいました(笑)。
 決勝はリードされているときもあったし、同点にされたり、本当に苦しい展開だったけど、ああいう形で終わることができて本当によかった。今大会の課題としては、カバーリングで前に出るときに、前に出過ぎて、逆にそこをつかれることがあるということ。このことはコーチにも指摘された。カバーリングというのは自分の持ち味だけど、ウィークポイントにもなるということを実感したし、このことはサイドのポジションでもセンターでも同じことだと思うので、修正していきたい。


■保坂一成 選手

 決勝点直前のシュートは、いい感じで自分のところにこぼれてきたし、本当に決めたかった。だから余計にそのあとのCKを決めくれって思っていたし、なんとなく中後が決めてくれるような気がしていた(笑)。
 決勝が押し込まれる展開になるというのはある程度予想していたので、それなりの対策はできたと思う。ただ、下がって対応してばかりでは勝てないとも思っていたし、後半30分過ぎからは相手にスペースができてきたので、そこを攻めることができた。
 今後の課題は、判断の速さ、スピードを向上させること。これは常日頃から思っていることだけど、今大会、世界のチームと対戦して改めて必要なことだと感じた。収穫としては、アメリカのチームやヨーロッパのチームなど、イメージではなく実際に対戦して経験を得られたことだと思っている。


■前田雅文 選手

 2点目のアシストについては、特に練習とかでやっているようなコースじゃなかったけど、(堀)健人の動きが見えていたので……。難しいコースじゃなかったけど、雨がふっていたから少しスリップしてしまったが、健人がよく走り込んでくれた。
 右ハーフは、グランパスでも1回しかやっていないんで、今回がほとんど初めてのような感じだった。ただ、守備に関しては戸川さんとか河端さんとかが指示の声を出してくれたし、指示がわかりやすかったので問題なかった。DFから、守備はまかせてくれていいから、攻撃のことだけ考えろと言われてバックアップしてもらったので、そんなにとまどいもなかった。
 今回、右ハーフをやったことで勉強になったし、2つのポジションができるという自信もついた。今後はどっちもできるので、チームに必要とされるならば、どちらもできるようにしていきたいと思う。


■山崎雅人 選手

 本当は点を取りたかったけど、勝てて本当にうれしい。イタリアのDFは身体が強いし、ボールを持っていないときの動きとかがうまくて、今まで対戦した他のチームよりもうまかったと思う。このチームでの収穫は、日本人特有の細かい動きとかスピードといったものが、世界でもある程度通用するということがわかったこと。課題としては、スタッフに言われたことだけをするんじゃなく、もっと自分で考えて工夫してプレーできたらよかったな、ということ。


■田代有三 選手

 イタリアはみんなうまくて強くて、今までのチームの中で一番守備がうまかったと思う。ただ、カウンターを意識していれば点を取れると思ってプレーしていた。(山崎がやや下がっていた分、積極定に上がっていたが?)、それは山崎さんとのコンビネーションの中でたまたまだと思う。山崎さんが下がれば自分が上がって、自分が下がれば山崎さんが上がるというコンビネーションは常に意識していた。
 今大会での課題は、やっぱり個人能力をもっとあげないといけないということ。どこがと言うのではなく全部。収穫はすべてにおいて、貴重な経験ができたことだと思う。


ユニバーシアード代表チーム・取材裏話




College Soccer Central 全国大会・国際試合 2003年ユニバーシアード大邱大会