この試合の前に地元中国チームが準決勝進出を決めたということもあり、約40000人が興奮する異様なムードに包まれてゲームが始まった。チームの平均身長は日本よりはるかに大型で、身長190センチ台の2トップの高さを生かしパワフルなまさにイングランドスタイルのサッカーで勝ち進んできたイギリスに対し、日本は3−5−2のシステムで最終ラインを高めに押し上げ、ロングボールを蹴らせないプレッシングサッカーを徹底するシステムをとった。さらに高さを生かしロングスロー、FK、CKでゴール前の空中戦を狙うイギリスの戦法に対しては、スカウティング・グループのビデオ分析を基にしっかりとした対抗策を持って試合に臨んだ。しかし前半開始からイギリスが5バック、1トップの守備的布陣で日本の攻撃を警戒し、予想に反して深く引いて自陣のスペースを埋める作戦に変更してきた。そのため日本も前半15分で(15)藤倉をMFボランチに上げて従来の4−4−2システムに変更し、(10)山根、(7)羽生にボールを集め、相手DFラインの手前にあるスペースからショートパスで崩す攻撃を狙った。前半30分、(6)堀之内のミドルシュートがクロスバーをたたく絶好機のほかは、超守備的なイギリス守備陣の壁を崩せず、0対0のまま前半を終了した。
後半15分、右サイドでスローインを受けた(10)山根がゴール前に送ったクロスボールが相手DFに当たってコースが変わり、GKの頭上を越えてそのままゴールへ流れ込むラッキーな得点により、あっけなく先制点を挙げ、日本がリードした。その直後からイギリスはFWを2トップにして攻撃的に前へ出てきた。後半31分FKから長身FW(15)アンダートンの打点の高いヘディングシュートをきれいに決められ、試合終盤で同点となった。しかし日本もあわてることなく、(13)巻に代えて投入していたスピードある(11)深井が前へ出てきたイギリスDFラインの背後を突き、何度もシュートチャンスを作り出した。結局、追加点を奪えず引き分けのままPK戦に突入した。
PK戦では、6人目まで両チームとも全員決め、イギリスの7人目のPKがポストに当たり、7−6で制し、日本チームが大きな山場の準々決勝に勝利した。
予想外の試合展開となったが、相手の出方を見ながら冷静に戦い、高さのある相手の攻撃を(9)太田、(13)巻、(4)坪井を中心にチーム全員が一丸となって撥ね返した粘り強い守備が勝利を呼び込んだと言える。これまでの豊富な海外経験を随所に生かし、勝負強さが身についてきたことを実感できるゲームであった。
文責・乾 真寛(全日本大学選抜コーチ)
|