2000年 第28回(U-21)トゥーロン国際大会(フランス)大会
College Soccer Central


試合結果 (日本のみ)



■第1戦■

 2000年5月26日(金)18:00 Kick Off  於:ニーム スタッド・デ・コスティエレ


  全日本大学選抜 1(0−0)1 メキシコU-21
           (1−1)
   得点者)43分【メキシコ】ラミレス
       79分【大学選抜】酒井 潤

 出場メンバー (日本側のみ)


  GK:高原寿康
  DF:三上卓哉、加藤秀典(→45分 藤倉 寛)、齋藤 竜、木村 誠
  MF:山根伸泉、藤田芳正、鶴見智美(→50分 酒井 潤)、堀之内聖
  FW:深井正樹、白尾秀人(→60分 太田恵介)

 戦評


 日本の大会初戦はツーロンからバスで約2時間、マルセイユの西北にある都市ニームのスタッド・デ・コスティエレ競技場で行なわれた。試合開始は、18:00だったが南フランスでは21:00頃まで明るく、かなりの高温で体力的に消耗が激しい試合となった。メキシコ代表は、大半が19歳の若い選手達で構成された選抜チームだった。試合は日本が自陣深くディフェンスラインを敷く布陣で相手の実力を見極めるための慎重な戦いで始まった。
 メキシコ特有のショートパスと鋭いドリブル突破によるスピーディーな攻撃を警戒したが、体格的にも日本の方が優り、単調なロングキックに頼る戦術しかなく充分日本ペースで戦えると判断し、20分過ぎからディフェンスラインを押し上げ、中盤での組織的なプレッシングから相手ボールを奪う本来の戦術に変更した。それにより、30分過ぎから日本のフォワード陣、深井、白尾のスピード溢れる突破やMF山根の攻撃参加が機能し始め、日本がペースを握った。そして、前半35分には右サイド藤田の突破から中央へ鋭いクロスボールがあがる。これに深井がダイビングヘッドで合わせる決定的なチャンスがあったが、わずかにゴールをはずれ、日本が優勢にゲームを進めつつ前半を両チーム無得点で前半を終了した。
 後半は、ハーフタイムの指示により攻撃的な布陣で積極的に前へ出る作戦に転じた日本だったが、後半開始早々の3分(43分)に、ゴール前にあいたスペースにドリブルを許しミドルシュートをゴール右隅に決められ、逆にメキシコに先制点を許す苦しい展開となった。どうしても、得点を奪いに出ざるを得なくなった日本は藤倉、酒井、太田の3選手を次々に投入し、システムをその都度変更しながら、最後は3バックにして総攻撃をしかけた。長身195センチFW太田へのロビングボールを多用し、相手ゴール前のこぼれ球を拾う作戦から、試合終了の1分前(79分)に右サイド藤田からの絶妙のセンタリングを、交替出場の酒井が見事なジャンプボレーシュートで蹴り込み、土壇場で1-1の同点とした。その後のロスタイムも必死の猛攻を試みたが、そのまま引き分けで第1戦を終了した。
 時差によるコンディション調整の日数もない中で、国際試合の経験が決して多いとは言い難い選手達だったが、システムや戦術の変更に冷静に対処できた。苦しい試合展開の中でも同点に追いついたこの経験は、今後の大きな自信につながることだろう。
 今回参加している国々の実力を比較すると、メキシコに勝つチャンスは充分にあったといえる。しかし、勝ちに等しい貴重な勝点1を挙げたことは大いに評価できる。日本は、次のイタリア戦に決勝トーナメント進出をかけ、戦うこととなった。

文責・乾 真寛(全日本大学選抜コーチ)

■第2戦■

 2000年5月28日(日)19:00 Kick Off  於:オーバーニュ スタッド・ド・ラトレ


  全日本大学選抜 0(0−1)2 イタリアU-21
           (0−1)
   得点者)10分【イタリア】マレスカ (PK)
       71分【イタリア】イアキンタ

 出場メンバー (日本側のみ)


 GK:高原寿康
 DF:三上卓哉、加藤秀典(→38分 酒井 潤)、齋藤 竜、木村 誠
 MF:山根伸泉、藤田芳正(→61分 太田恵介)、藤倉 寛、堀之内聖
 FW:深井正樹、白尾秀人(→30分 関根秀輝)

 戦評


 第2戦の相手、イタリアはセリエB、Cで活躍する20歳の若手プロ選手を中心に構成され、ボランチやストライカーのポジションには既にセリエAで出場実績のある選手も含まれており今大会出場チームの中でも最強の実力を有している。第1戦のコートジボワール戦では、自陣ゴール前に深く引いた伝統の守備的布陣(カテナチオ)によってゴール前を堅く守り鋭いカウンターで相手の背後をつくというイタリアらしい試合運びで2−0の勝利を収めている。
 試合は、イタリア3:5:2、日本4:4:2のシステムで始まった。前半日本は自陣に相手を誘い込み相手3バックの両サイドや裏のスペースをつく戦い方でスタートした。前半9分、中盤でのプレッシングからボールを奪い右サイドのオープンスペースに展開、藤田からのアーリークロスに走り込んだ白尾がシュート。惜しくもバーにあたりゴールならず、立ち上がりのビックチャンスを逃した。その直後の10分、日本陣内のペナルティエリア内へのスルーパスにGK高原が飛び出してセービング。しかし、これがPKの判定となり、0−1とイタリアに先制を許した。その後ゲームの主導権はイタリアに握られるものの、GK高原が超ファインプレーを連続してゴールを死守し、DF陣も粘り強く守り抜き前半を0−1で折り返し、後半の勝負に望みを繋いだ。
 イタリアは、日本のプレッシング・ディフェンスに対して、ワンタッチプレーで局面を打開しドリブルとパスを状況に応じて使い分ける優れた戦術眼を持ち、ある程度は追い込めてもなかなかボールを奪えないハイレベルのゲーム展開で優位に立った。一方日本は、ボールを奪ったあとの展開力に乏しく、2トップへのサポートも遅く厚みのある攻撃ができなかった。
 後半、太田、関根の3トップ、第2列目に深井、山根という攻撃的な布陣で、何とか同点に追いつきたい日本は前線から相手ボールに積極的なプレッシャーをかけ、イタリアゴールに迫った。しかし、ラスト10分、日本が前へ出た背後を逆にうまく突破され決定的な2点目を許した。イタリアの試合運びのうまさと、経験の差が表れた試合だった。しかし、敗戦の中にも多くの収穫はあったといえる内容だった。第3戦、コートジボワール戦に決勝トーナメント進出をかけ奮起したい。

文責・乾 真寛(全日本大学選抜コーチ)

■第3戦■

 2000年5月30日(火)19:00 Kick Off  於:シフォー スタッド・バプティスト


  全日本大学選抜 2(0−1)2 コートジボワールU-21
           (2−1)
   得点者)32分【コートジボワール】マエストロ
       50分【コートジボワール】ロマリック
       60分【全日本大学選抜】 太田恵介
       80分【全日本大学選抜】 関根秀輝

 出場メンバー (日本側のみ)


 GK:高原寿康
 DF:三上卓哉、齋藤 竜、藤倉 寛、木村 誠
 MF:石田祐樹(→20分 酒井 潤)、鶴見智美(→40分 太田恵介)、堀之内聖、
    山根伸泉(→65分 石川竜也)
 FW:深井正樹、関根秀輝

 戦評


 第3戦の相手コートジボワールは、1994年から始まったフットボールアカデミーで育成されたエリート選手達で、全員がシドニー五輪予選に出場した代表選手で構成されている。日本はこの試合に勝って勝点3を取らなければ決勝トーナメントに進出できないため、前半から中盤でプレスをかけ、抜群の身体能力をベースに、ドリブル主体のアフリカン・スタイルのサッカーに対して積極的な戦いを挑んだ。個々のドリブルテクニックが素晴らしいコートジボワールに対して、簡単に飛び込まず1対1の局面で負けないことと、思い切ったサイドチェンジで相手の両サイドバックの背後を狙い、クロスボールから得点を奪うというゲームプランで試合に臨んだ。
 ゲームは開始からコートジボワールがドリブルとショートパスで圧倒的にボールを支配するものの、日本も組織的かつ粘り強いディフェンスで対抗した。しかし、前半32分、相手コーナーキックに対するマークが一瞬甘くなり、フリーでヘディングシュートを決められ先制点を奪われる苦しい展開となった。
 どうしても得点が欲しい日本は、後半の開始から、長身FW太田を投入し、空中戦で相手ゴールに迫る作戦に変更した。ディフェンスラインを上げ、相手ゴール前のこぼれ球を拾い波状攻撃を仕掛けたが、逆に50分相手のカウンターアタックに、背後のスペースをつかれ0−2とされてしまった。しかし、あきらめず全員で必死に戦う日本は60分FW太田が相手DFを振り切り豪快なシュートを左足で決め1−2とし、粘りを見せた。この1点で勢いづいた日本は、怪我のため調整を続けていた石川を左サイドMFとして、ラスト15分で今大会始めて投入し、勝負に出た。
 FKや左サイドからのクロスボールを太田に集め総攻撃に出た日本は、終了間際の80分、左サイド石川からのスルーパスを深井がシュート。相手キーパーがはじいたところを関根が押し込んで気迫の同点ゴールを挙げた。しかし、試合は引き分けのまま終了し、勝点2、2分1敗のグループ3位となり決勝トーナメントへの進出は果たせなかった。後半の勝負にかける執念、ファイティングスピリットは素晴らしかったが一瞬の隙をつかれた2失点が悔やまれる一戦だった。
 初出場した国際大会で、経験の少ない大学選抜の選手達は3戦を通じて本当によく健闘したと言っていい内容だった。多くの経験を今後に生かしつつ、来年のユニバーシアード本大会へと更なる成長を期待したい。
 日本サッカー協会には、このような国際大会に学生代表チームを派遣して頂いたことを感謝するとともに、今後も継続的に参加できることを切に望みたいと思う。

文責・乾 真寛(全日本大学選抜コーチ)

※試合はすべて40分ハーフ、合計80分で行なわれています。


College Soccer Central 2000年トゥーロン国際大会