待望の先制点だった。それまで、出会い頭の事故のような立ち上がりの失点で、初勝利を逃していた日本だが、この試合では、まさにそのうっぷんを晴らすような展開で開始早々に先制。ここ数試合のようなミスも少なく、狙った通りの展開でオーストラリアを終始圧倒した。また、ピッチが規定サイズよりも狭いサンタ・ポンサスタジアムと違い、ほぼフルコートサイズのマガルフでの試合ということもあってか、日本らしいスペースを広く使った攻撃の形が度々見られた。後半の集中力を欠いた時間帯にオーストラリアに失点し、また迫井の2枚目の警告による退場があるなど、問題がないわけではなかったが、全体的には本来の日本のサッカーの形が一番出た試合といえるだろう。
連戦で高木、早川、戸田、梅田の4人を怪我で欠き、交代選手状況が一気に苦しくなった日本。この試合では、ここ2試合出場のなかった谷池を起用し、GK山岸、右から迫井、谷池、影山、石川というDFラインでスタート。中盤も鶴見・佐伯のダブルボランチから鶴見のシングルボランチに変更。右ハーフに佐伯、左に宮沢、そしてトップ下には樹森、FWは左が柿本、右が黒部を置いてゴールを狙わせるなど、若干システムを変更してオーストラリア戦に挑んだ。
試合は、1分に日本が今大会初の先制点を挙げ、開始直後から一方的な日本ペース。中盤で鶴見がはたいたボールを柿本が右サイドからドリブルで持ち込み、豪快なシュートを放ってゴール。30メートルはあろうかという距離のあるミドルシュートだったが、「ゴール前に誰もいなかったし、打ってみようと思って」という柿本の思いきりのよさが、日本に待望の先制点をもたらした。この先制点で勢いに乗った日本は、5分、12分にも立て続けにオーストラリアゴールを脅かす。なかでも、この試合で変更を加えた中盤の鶴見、佐伯、宮沢、樹森の4人が機能的なプレーを見せ、攻守両面で好展開を見せた。
さらに18分には、樹森→黒部→宮沢→迫井とつないだボールを逆サイドに渡る前にDFがクリアーし、CKのチャンスを得る。佐伯が蹴ったCKは黒部のヘッドをかすって相手GKが触り、再びCKへ。19分、右サイドから石川のCKがゴール前の混戦の中でこぼれたところを、ペナルティエリア中央で宮沢がキープ。冷静にコースを見極めて、ループ気味のシュートで2点目を追加した。
27分には、オーストラリアの(9)KOLPAKが絶妙のコースでシュートを放つが、これはGK山岸が好判断でセーブ。このセーブで波にのった山岸は、40分のオーストラリアのFKや、その後の波状攻撃もきっちりと防ぎ、前半を無失点におさえた。
後半に入っても日本優勢は変わらず、3分に樹森、4分に佐伯、7分に石川がFKでゴールを狙うなど積極的な展開。それでも追加点をなかなか奪えずに焦りが見えてきたところだったが、12分にハーフウェーライン近くで黒部がボールをキープ。そのまま独走状態でペナルティエリア内までドリブルで突破すると、左サイドをフリーであがってきた柿本にパス。これを柿本が冷静に鋭角のシュートで決めて、3点とリードを広げた。
その後も、日本の圧倒的な展開は変わらなかったが「余裕がありすぎて余計なことをやってしまっていた。ゴール前で遊びすぎたんじゃないかと思う」(野地監督)というように、プレーが慎重になりすぎてそれ以上の追加点を奪えない。逆に31分には、日本の集中力が欠いた隙をつかれ(11)PATCHの右サイドの突破を許してしまう。DFとGKの連携のタイミングの悪さもあり、PATCHのパスをペナルティエリア右で受けた(15)HARNELLのシュートがゴールを割り、スコアは1−3。残念ながら完封勝ちの可能性はなくなった。また、36分には右SBの迫井が2枚目の警告で退場。しかし、その後はあぶなげなく試合を展開し、結局1−3のまま、待ちに待った日本の初勝利となった。
「相手は格下だったし、勝って当たり前だったとは思う」(DF・谷池)という試合ではあったが、それでも勝ちを拾うことのできなかった今大会の日本。「やっぱり先制されなかったし、先に3点も取れていたのが大きい」(同・谷池)というように、初の3得点、なかでも開始1分の柿本のゴールは非常に大きかった。
「ピッチが狭いとプレッシャーがかかるのも早いし、中盤がガチャガチャして落ちついてボールをキープできない。日本はスペースを使うサッカーなので、やりにくい部分はあったが、今日は広いスペースを使うことができた」(谷池)というように、マガルフの広いピッチでようやく伸び伸びとした、日本本来のサッカーを見せてくれたという感も強い。南アフリカが棄権したため、この試合に敗れると最終戦は不戦勝で試合がないという可能性もあったが、なんとか13位決定戦に駒を進めることができた日本。最終戦は再び苦手とするサンタ・ポンサスタジアムで戦うことになるが「あとは勝つだけ。勝って終わりたい」(柿本)との言葉通り、締めに相応しい試合を見せてほしい。