「相手は(南アフリカ戦の不戦勝で)1戦休んで休養十分だから、立ち上がりは特に気をつけるよう指示したのだが……」。下位トーナメントの1回戦、対戦相手のイギリスは、野地監督が試合前に危惧していた通り、試合開始直後の隙をついて先制。日本は、前試合に続いてこの試合でも立ち上がりの時間帯に相手にゴールを許し、この失点に最後まで苦しめられることになった。一度は同点に追いついたものの、後半に入ってからのセットプレーで再び失点。同点ゴールを挙げた前後は完全な日本ペースとなっていたが、追加点を挙げられずに前半終了。結局、不容易な失点と、ゴールすべき時間帯にゴールできない日本のツメの甘さが、最後の最後まで影響し日本の初勝利はお預けとなった。
日本は、この試合でも若干のメンバーを入れ替え。GKは高木、DFラインは右から迫井、河口。そして前試合に初出場をはたした影山と左SBに北出をおく4バック。中盤は鶴見と佐伯のダブルボランチに右ハーフが早川、左に戸田。前線は初スタメンの梅田が右に樹森が左という布陣で挑んだ。
失点シーンは開始20秒。イギリスのキックオフボールを(11)Marc COATESがドリブルで持ち込み、影山を振り切ってペナルティエリアへ。(11)から出されたパスをフリーで受けた(15)James STROUTSが、GKとの1対1をかわしてゴール。
あっという間に先制された日本だったが、5分すぎからは徐々にペースを掴み、5分、11分と続けて戸田がシュート。ミスからイギリスにサイドを突破されるシーンが目立つものの、攻撃のペースは日本に移りつつあった。そして20分には、北出のカットしたボールを、左サイドで度々突破を見せていた戸田がドリブルで前線の樹森にパス。樹森のクロスをフリーで走り込んでいた早川がワントラップしてシュートを放ち日本がゴール。ゲームは振りだしに戻った。
この得点に完全に試合の流れに乗った日本は、その後も度々イギリスのゴールに迫るが、結局フィニッシュで責め切れず同点のままハーフタイムに。
前半終了時の勢いのまま始った後半は3分に早川→樹森、6分に梅田→戸田と攻撃の形ができるがゴールまではいたらず。逆に11分には、ジリジリと攻撃ラインを押し上げるイギリスに対して不容易なファウルからFKを与えてしまう。このFKをイギリスの(10)が壁の間を抜けるシュートでゲットし、ゲームは再びイギリスがリード。14分には戸田のスローインを樹森がつなぎ、梅田がヘディングを放つという非常に惜しいシーンがあったが、これはわずかにゴール右。同点に追いつく決定的なチャンスを逃した日本は、宮沢・黒部を投入して流れを変えようとするが叶わず。20分に戸田、24分に黒部、27分に鶴見とシュートチャンスを得ることは得るのだが、いずれも決定的なチャンスにまでは至らない。27分には怪我で調子の悪い梅田と柿本を交代するが、状況は変わらず。むしろ、30分すぎからは、焦る日本に対しイギリスが落ちついた展開でゲームを支配。ラスト5分は日本も前線にロングボールを放り込むだけに終始してしまい、結局1−2のままタイムアップとなった。
「最初の1分の失点が大きかった。トーナメントでは気持ちを切り替えていこうと言っていたのが、あの失点で自分たちの力を出し切れなくなってしまった」と河口キャプテンが振り返るように、開始直後の失点があまりにも大きな失点となってしまった試合だった。しかし、試合全体に見れば決して相手の力が上回っていたというわけではない。「すべてが裏目裏目になってしまった」(野地監督)もあるが、ゲーム全体を通しての凡ミスの多さやツメの甘さ、DFラインの不容易なミスなどがあまりにも多すぎた。リードされているときに、いかに冷静にゲーム運びをできるか。日本は、そうした面で足りない部分が多く、結果としてゲームを落としてしまったのかもしれない。