すでに2敗を喫し、下位トーナメント出場が決まっている日本代表。同じく下位トーナメント出場となったアイルランドとの試合は、第1戦、第2戦とは大幅にメンバーをチェンジしての対戦となった。
トーナメント戦で対戦することになるCグループの南アフリカは大会直前に棄権。そのため、この試合に勝ってグループ3位になれば、トーナメント1回戦は不戦勝となる。酷暑の中での連戦となっているだけに、1試合分の休みは大きい。また、2試合ともに無得点に終わっているだけに、この試合こそ初得点・初勝利を望みたいところ。
日本は影山、北出、樹森、柿本が初出場、早川が初スタメンなど、計5選手を入れ替え。前2試合では右SBだった迫井と影山をセンターにおき、左が石川、右が北出という4バックと鶴見・宮沢のダブルボランチ、オフェンシブに早川と戸田、そしてトップに樹森と柿本という布陣でスタートした。ややモチベーションの落ちているアイルランドに対し、日本は積極的にボールを支配。しかし初出場の選手が多いためか動きが堅く、なんでもない局面でのミスからボールを奪われるシーンが目立つ。開始早々5分の失点も、そんなちょっとしたミスから生まれた。DF北出がキープしたボールをGKにバックパス、GK山岸はそのボールを前線にフィードするという、なんでもない一連のシーン。しかし、山岸のフィードボールはアイルランド(8)HARKINの足元にダイレクトに届き、そのままHARKINが持ち込んでゴール。出会い頭の事故のような先制点ではあったが、「この試合こそは先制しよう」(野地監督)との意気込みで試合に挑んだ日本にとっては痛い失点シーンだった。
失点時間が早かったこともあって、その後すぐに立て直しかかった日本だが、思ったように前線までボールがつながらない。中盤のボールつなぎから、前線にパスが出るときの判断が遅く、ことごとくアイルランドにカットされてしまう。それでも30分〜40分前後は日本が立て続けに攻撃展開を見せ、33分には宮沢→樹森とつないでシュートを放つ。37分には柿本のシュートをGKが弾いてCKのチャンス。CKからのこぼれ球に反応した早川がシュートを放つも、これはわずかにバーの上。流れを日本に引き寄せるも、得点まではいたらなかった。
逆に42分には、アイルランドの(10)T.McCALLIONに左サイドを突破され、あわや追加点という展開も。ペナルティエリア左から放ったシュートは、クロスバーに当たってゴールにこそならなかったが、中盤からDFの集中力が欠けた一瞬をつかれてのピンチシーンとなった。しかし、その1分後の43分には、日本がFKのチャンス。キッカーの石川が影山のヘッドに合わせるが、ボールはゴール右隅へ。結局、これが前半最後のチャンスシーンとなり、前半が終了。
後半に入ると、得点を焦る日本はプレーに正確さを欠き、立ち上がりをアイルランドに支配されてしまう。またピッチが若干狭いせいか、クロスを使った攻撃にミスが多く展開が単調になりがち。
後半12分には柿本に代わって梅田を投入すると、徐々に流れが日本に傾きかけるが決定的なチャンスまではいたらない。18分には、右サイドを突破した樹森からフリーの鶴見へボールが渡るが、シュートはゴール左に反れ惜しいチャンスを逸してしまう。27分に戸田に変わって黒部が入ると、アイルランドの運動量が落ちてきたこともあって、流れは徐々に日本ペースに。度々オフサイドを取られたものの、「精度よりも、切り崩していってチャンスを作ろうと思った」という黒部の動きが、疲れてきたアイルランドのDFを効果的に混乱させ、30分すぎからは一方的な日本ペース。それでもゴールが生まれず、敗戦が色濃くなった42分、中盤でボールをキープした宮沢が右サイドの樹森にパス。ボールを受けた樹森が、ドリブルでペナルティエリア内まで持ち込むとDFをひきつけて左サイドフリーの黒部にパス。これを黒部がきっちりと決めて、待望の初得点となった。その後、追加点を狙う日本はたたみかけるような攻撃を続け、43分にはペナルティエリア左で黒部の落としたボールをフリーの梅田が拾って、絶好のチャンス。ワントラップしてゴールを放つものの、左肩でのトラップがハンドとの判定でノーゴールとなった。その後も終了間際まで休みなく攻撃を続けるが、追加点を奪えないままタイムアップ。初得点と初勝点を得たものの、初勝利はお預けとなった。
なお、勝敗と予選リーグ成績には関係ないが規定により、試合後PK戦を実施。アイルランドは1番手の(6)PHILSONのシュートを山岸がストップ。続く(10)McCALLIONもゴールを外き、2人が失敗。対する日本は全員がPKを成功し、PK戦は4-2で日本が勝利を収めた。
初得点を得た日本だが、中盤から前線にチグハグなプレーが多く相手にボールを奪われるシーンが目立った。後半に入ってからは、ダブルボランチの宮沢と鶴見のコンビネーションから切り崩すシーンもあったが、それでも樹森や戸田らスピードのある選手を活かすまでいたらなかったのは残念なところだ。DFに関しては、初出場の影山が奮闘。迫井とともにクレバーなプレーで最終ラインをひっぱった。失点は残念だったが安定していたといえるだろう。全体的にはとにかくフィニッシュの形が少なく、それが課題という感はあるが、もう少し全体の意識を統一できれば、決して「勝てない」チームではないだろう。